多様性
今回カオニャオ・デフチーム来日期間、一番葛藤していたのは聴覚障害のメンバーではなく、ただひとり聴こえるソーンだった。
少数民族モン族の彼は、帰還難民地域で生まれ育った。複雑な事情、厳しい暮らし、数々の圧迫に加え、言葉も宗教も食べ物も全く異なる生活をしてきた彼が、聴覚にハンディーをもった若いメンバーのおにいさん役としてみんなを引っ張らなければならなかった。途中で挫折しそうになり体調を崩した彼に私は「呪」をかけた。葛根湯を買い、怪しい壺に入れてホテルの部屋に行き、でたらめな呪文を唱えながら飲ませたのだ。彼の部屋に行くと真っ暗・・電源を探すと「つけないで!!」という。普段真っ暗な夜の中で生活しているので、日本のホテルの電気はまぶしすぎその中にいると光で頭痛がするとのこと。「つけなくても100%みえてるし」と具合悪いせいで幽霊のような声でいう彼の部屋でニセ呪術師あさぬま、実はびびりまくり。それでも彼は、最後までリーダーとしてチームを引っ張り表現者としても大きく飛躍することができた。成田空港で別れる時、彼は私を抱きしめて言った「あれ嘘だったのかも・・って今気がついた。ありがとう。」