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2019年2月

多様性

 今回カオニャオ・デフチーム来日期間、一番葛藤していたのは聴覚障害のメンバーではなく、ただひとり聴こえるソーンだった。Img_5367 少数民族モン族の彼は、帰還難民地域で生まれ育った。複雑な事情、厳しい暮らし、数々の圧迫に加え、言葉も宗教も食べ物も全く異なる生活をしてきた彼が、聴覚にハンディーをもった若いメンバーのおにいさん役としてみんなを引っ張らなければならなかった。途中で挫折しそうになり体調を崩した彼に私は「呪」をかけた。葛根湯を買い、怪しい壺に入れてホテルの部屋に行き、でたらめな呪文を唱えながら飲ませたのだ。彼の部屋に行くと真っ暗・・電源を探すと「つけないで!!」という。普段真っ暗な夜の中で生活しているので、日本のホテルの電気はまぶしすぎその中にいると光で頭痛がするとのこと。「つけなくても100%みえてるし」と具合悪いせいで幽霊のような声でいう彼の部屋でニセ呪術師あさぬま、実はびびりまくり。それでも彼は、最後までリーダーとしてチームを引っ張り表現者としても大きく飛躍することができた。成田空港で別れる時、彼は私を抱きしめて言った「あれ嘘だったのかも・・って今気がついた。ありがとう。」

カオニャオ・デフの来日

カオニャオ・デフが来日した。ほとんどのデフメンバーははじめて靴をはき、自分のカバン(ほとんど借り物だけど)を持って出発した。来日目的であるワークショップとコラボレーションはたいへんみのり多いものだった。たいへんだったのは生活。ホテルはシングルでカードキー。カードキー自体初めての概念なので、いろいろトラブル。密閉された空間なので、一度入室してしまえば連絡を取りたくてもデフメンバーにはノックも、電話も意味が無い。プライバシー保護意識が強い日本では、外の人間が「何号室、開けてください。」と言っても開けていいわけがない。彼らは、時差も含め不慣れな時間に起きてロビー集合しなくてはならない。日本の聴覚障害者は特別の体感目覚ましをもっているが、彼らにそんなものはない。それぞれ考えた。備品のやわらかいスリッパに自分の携帯電話をいれバイブに設定しておでこに縛り付ける人。ひもを足の指につなぎ、先をドアの外に出しておく人。どちらも結局うまくいかなかったけど・・とにかく毎日大さわぎ。あ~楽しかった!!と彼らは言った。よかったよかった。私は眼の下にクマ。Img_5385

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「寒い」という概念

 もうすぐラオスからカオニャオ・デフのメンバーが来日する。聴覚障害の彼らは、テレビ電話機能を使用するためにスマホを持っているメンバーが多いが、つい最近まで文盲だったので、データとしてものごとを受け取ることがまだできない。先日ラオスで、今回初めて飛行機というものに乗って海外にやってくる彼らに「日本は寒い」と伝えようと試みた。かれらの「寒い」は20度くらいが限度。「全然体験したこともない寒さを理解するのは無理。」というのが彼らの意見。昨年3月に来日している同じくデフのカムクンに説明させると「日本では、みんな風が身体に当たらないように努力してるようなんだ。」とますます意味不明。寒さだけではない。さまざまな概念を知らない彼らに伝えてゆくのは、とてもたいへん。一方でデータだけやたらみて理解した気分になっている我々と違い、すべてを実感として受け止めていこうとする彼らの姿勢に、目が覚める思いだ。

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